2位、という言葉に愕然とした。
俺のクラスや、学年の男子からは票を集められただろうし、アンコールに影響されて入れてくれた人もいるはずだから、ここで1位をとれるかもしれないと思っていたが、甘かった。
『花鳥風月』の奴らを見ると、にやにやと笑っている。・・・・・憎たらしい。
「焦ってる姿は周りからみれば頼りないだけだよ。」
あの人はそう言うが、この状況で焦らずに、いつ焦れというのか。
そんな俺はお構いなしに生徒会長は発表を続ける。
「ちなみに3位は『チーム☆電車男』。票数は129票でした。1位と2位は接戦でしたが、ほとんどの票を上位2バンドが独占した結果になったようです」
そう言った後に、他の生徒会役員が10個の箱を持ってきた。
それぞれに出場したバンド名が書いてある。中身は見えない。
生徒会役員が全てをさかさにし、中身が空のことを確認させた。
「それでは一位のチームには5ポイント、二位のチームには2ポイントを追加しましょう」
そう言って生徒会長自身が『花鳥風月』と書いてある箱にボールを5つ、『MATERIALS』と書いてある箱にボールを2つ入れた。
と、さっき箱を持ってきた役員がさっと登場すると、箱の入れ口を布で覆ってこちらがわから見えないようにした。
「どうやら、生徒会役員が何処に投票するか、最後までわからないようにするらしいね」
あの人が言うが、そんなことは分かっていた。
「それでは、いよいよ運命の生徒会役員の投票です。全15人の生徒会役員にこのバンドコンテストの結果がゆだねられます。それでは、どうぞ!」
司会の生徒会役員はそう言うと、すぐにマイクを置き、自分もステージ上にあがると、一人に1個ずつボールを渡した。
役員は一列に並び、箱の前をあるいていく。
そして、どの箱にボールを入れたかわからないようにそぶりを変えながら投票していくのだ。
この時点で俺の心臓は早鐘をうっている。早鐘どころじゃなかったかもしれない。
今までの頑張りが、ここで実って文化祭に繋がるか、もしくは、消える。
隣を見ると、あいつ達もも大分緊張している様子だった。
ただ、あの人はいつものように澄まし顔。
2〜3分が経過したかというとき、また司会がマイクを持つと、
「役員の投票が終わったようです!」
と言うとステージ上にならんだ役員は一人一つずつ箱を持った。
「私のコールで、役員は箱の中のボールを一つずつ投げていきます!最後まで、ボールが残っていたバンドが優勝です!」
――なるほど、なかなか面白いじゃないか。
俺は小学校のころの玉入れを思い出した。が、それもつかのま
「それでは、カウントします」
という一言で現実に引き戻された。
「1」
1、がカウントされた時点で10のうち、6の箱を持っていた役員が箱を逆さにした。何も落ちてこない。空、ということだろう。
『MATERIALS』は少なくとも2つボールが入っているはずだ。まだ、安心。
「2」
というカウントで、さらに1つの箱が空になったようだ。残りは3バンド。
「3」
のカウントで、さらに一つ、箱が空になった。
残ったのは『花鳥風月』と『MATERIALS』のバンドだけ。
「4」
「5」
カウントは続くが、まだボールはなくならない。かなりの接戦のようだ。
そして、
「9」
までカウントされた時、あの人がふと口を開いた。
「成る程。1ポイント差だね。どちらかが9で、どちらかが10」
俺には速すぎてできなかったが、あの人はもう計算してしまったらしい。流石だ。
その言葉が聞こえたように、司会も
「おぉっと!どうやら『花鳥風月』と『MATERIALS』は1票差のようです!次、ボールが出てきた方の優勝です!」
汗が噴き出してくる。隣でもあいつは真剣な眼差しでステージを見ているし、彼女は手を合わせて、神様に祈っている。
「それでは、運命のカウント――10」
今までの練習がフラッシュバックのように頭によぎる。そういえば、いろいろあったな。
二人の役員が両方の箱の中に手をいれた。
手を取り出す。
その手にボールが握られていたのは――


『MATERIALS』の箱を持っていた方の役員だった。
『MATERIALS』の箱を持っていた役員は会場高々にボールを投げる。
『花鳥風月』の箱を持っていた役員は大げさに箱を逆さにして振り、空のことを見せる。
「生徒会主催バンドコンテスト、優勝は『MATERIALS』!!」


一瞬、一瞬だけだが会場がしんとした。
そして、次の瞬間。
会場は一杯の拍手と
「よっしゃー!」
というあいつの雄叫び。
そして、わずかなブーイングでいっぱいになった。
俺も立ち上がってガッツポーズ。
あの娘と彼女もお互いに手を合わせて喜び合っている。
隣にいるあの人もにやりと笑った。
――嬉しい。
素直に俺はそう思った。
『花鳥風月』の連中を見ると悔しそうな顔をしている奴、ブーイングをしている奴、様々だった。
「それでは、これでバンドコンテストの結果発表を終わります。表彰式は後ほどになります。それでは、先生方にマイクをお渡しします」
という言葉で会場の騒ぎがざわめきになり、沈黙になった。
「はい、それでは、今度はメインイベント『合唱祭』の結果発表にうつります」
今度は、クラスごとの合唱の発表。
「それでは、1年生から発表しましょう。1年生の最優秀賞は――」
発表が始まった。
賞は最優秀賞、指揮者賞、伴奏者賞の3種類が各学年に授与される。
俺達のクラスは3年B組。
「それでは、3年生の結果発表です」
ドキン
心臓が一拍、強い鼓動をうった。
冷や汗がながれる。
俺はもちろんバンドも頑張った。
しかし、合唱も、そして指揮も同じぐらい頑張ったつもりだ。
なにしろ指揮者が下手だと合唱も下手になる。
俺の指揮が下手だと、クラスは最優秀賞を逃すことになってしまうのだ。
「3年生の指揮者賞は、F組の――」
そこまで聞いて俺は肩を落とす。
まぁ、もとより俺が指揮者賞を取れるなんて思っていなかったので、そこは予想通りといえば予想通りだ。
――問題は、最優秀賞。
俺は自分にそう言い聞かせた。
「伴奏者賞、C組――」
ここも、予想通りだった。
伴奏者賞は、彼女。
当然だろう。彼女はピアノがずば抜けて上手い。これは、誰もが予想していたことのはずだ。
先生が一呼吸置いた。そして、声を出す。
「そして、最優秀賞は――」
B組、B組
心の中でそうつぶやく俺。手は汗でぐっしょりだった。
「最優秀賞は、3年B組です!」
その瞬間、すべてが抜けていった気がした。
最優秀賞。やった。
一斉に
「よっしゃー!」
「やったー!」
「キャー!」
という、悲鳴と雄叫びが入り交じった声があがる。
俺も立ち上がり、ガッツポーズ。
――まさか
正直な話、それが第一印象だった。だが、その後に思った。
――これが、頑張りの結果って奴か


「それでは、表彰式にうつります」
ステージの上には、最優秀賞を授与するB組代表のあの娘、バンドコンテストの1位を授与する俺とあいつ、伴奏者賞を授与する彼女と、MATERIALSからはあの人以外の全員があがっていた。
「生徒会主催バンドコンテスト、2位『花鳥風月』殿。おめでとうございます!」
生徒会長にそう言われ、奴らが賞状を受け取るが、その表情は喜んではいなかった。
『花鳥風月』の連中が後ろに下がり、俺とあいつは揃って前にでる。
「生徒会主催バンドコンテスト、優勝『MATERIALS』殿。おめでとうございます!」
あいつが賞状を受け取り、俺がトロフィーを受け取る。
そして、ステージ上から万年の笑みで観客席に掲げてみせる。
観客席からは
「よくやった!!」
ハピマテ最高!!」
という声援がいくつもあがった。



「やっぱ遊園地はいいなぁ」
あいつが言った。
ここは、遊園地。以前彼女と一緒に来た遊園地だ。
俺達、MATERIALSのメンバーはあいつの提案で、バンドコンテストの打ち上げとして遊園地に来ていた。
しかし、あの人は
「パス」
と一言だけ言って、提案を断った。
そのため、遊園地に来たのは、俺、彼女、あいつ、あの娘。
――なんか、ダブルデートみたいな形になっちゃうな・・・・・
俺はそう思いつつも、その提案に乗り、遊園地に来た。
「中学生の打ち上げで遊園地っていうのもどうかと思うけどなぁ・・・・・」
俺がそう言うと、あいつは
「いいじゃんいいじゃん。楽しいんだから」
という一言で流し、
「最初はどれにのる?これか?それともあれか?」
と、はしゃいだ。
「まぁ、落ち付けって」
俺は笑いながらそう言うと、券売機にあいつを連れて行った。


ガタンゴトン・・・・・
ロッコがきしみながら進む音が聞こえる。
ジェットコースターではない。
ゴーストハウス。お化け屋敷だ。
以前にも、彼女と一度このアトラクションは体験していた。
――二度目だから怖くもないだろう
と思っていたが、お化け屋敷の入り口の張り紙を見て、その考えは覆された。


当ゴーストハウスは改装をおこない、登場するゴーストも心機一転しました。
皆様を、闇の世界に・・・・・


ようするに、前行った時とは変わっているということだ。
――こりゃぁ・・・・・
少しびくびくしながら、トロッコに乗った俺。
たまに、コウモリや鳥の鳴き声が聞こえる。コレは前と同じだ。
――やっぱり、基本は変わってないのか。
そう思いながら、ちらりと隣に座っている彼女の顔を見た。
びくびくして、きょろきょろと周りをみまわしている。
反対側の隣には、あの娘が座っている。
平然とした顔をしているが、怖がっているのがまるわかり。
と、急に上から空気が吹き出てきたかと思うと、目の前に人形が落ちてきた。
「きゃぁっ!」
隣で悲鳴をあげる彼女。
俺もびくっと驚きはしたが、声をあげるほどではなかった。
その後もトロッコは進んでいき、彼女とあの娘は
「きゃっ」
とか
「ひぃっ」
とかいう悲鳴をあげていた。が、俺とあいつは無言のままだった。
それはそうだろう、女の子の前で悲鳴をあげるほど俺とあいつは男を捨てていない。


そのまま、お化け屋敷は終了。
その後も、ジェットコースターやゲーセンに立ち寄り、夕方になった。
「じゃあ、あと1個くらい乗って、帰るか」
あいつがそう言ってパンフレットを広げた。
「やっぱ最後はこれか?」
そう言って指さしたのは、観覧車だった。
「賛成」
「私も――」
あの娘と彼女が言う。
俺も反対する理由もなかったので
「俺もそれでいいよ」
と言った。
だが、少し不安なことがあった。
俺は、どうも観覧車に乗ると人が変わるようだ。
横浜に行ったとき、ハピマテと乗った観覧車。あの時は、話もなにもできなくなってしまった。
彼女と前に来たこの遊園地では、観覧車の中で・・・・・キスをしようとしてしまった。
俺は少しだけ、不安を抱きつつも、券売機の『観覧車』のボタンを押した。


翌日。
俺が学校に行き、教室に入ろうとすると、あいつに呼び止められた。
あいつに誘導され、屋上にいくとそこにはMATERIALSのメンバーが全員集まっている。
「どうしたの?」
俺が訊くと、その質問にあの人が答える。
「君たちが遊園地で楽しく遊んでいる間に重大なことになったよ」
そこで話を切って、あの人がみんなを見回した。
そして、話し始めた。
「昨日は、街に買い物にいったんだ。そうしたら、奴らがいてね――」
「奴らって?」
俺が口を挟む。あの人は、少しは考えてくれというような顔をした後に
「『花鳥風月』の連中だよ」
俺が納得したのを確認すると、再び話し始めるあの人。
「どうも奴らは僕たちが優勝したことを快く思っていないようでね。路地裏に誘い込んで、集団私刑するつもりだったみたなんだ。」
「うわぁ・・・・・」
あの娘が声を漏らした。そこまで、奴らの卑怯なやり方が嫌だったのだろう。
奴らは顔はいいが、心は悪いみたいだ。俺が言うと負け惜しみに聞こえるかもしれないが。
「でも、相手が悪かったみたいでね」
笑いながら言うあの人に、あいつが興味津々な顔をして訊いた。
「何をしたんだよ?」
「なんて事はない。逃げたんだよ」
あいつは拍子抜けしたような顔をした。
だが、その後にあの人は言葉を続ける。
「でも、逃げた方にちょうど、うん、ちょっと怖い高校生の先輩方がいたんだ。たまたまね」
『たまたま』の部分を強調して言うあの人。だが、その顔はにやりと笑っている。
「僕は静かに走り抜けたから何も言われなかったけど、奴らはどたどた音をたてて追いかけてたから。先輩方は領域を侵されたと思ったらしく――」
あの人はそこで言葉を切って、新しい言葉を探した。
そして、こう続けた。
「まぁ、そして奴らは今日顔をあざだらけにして登校したわけさ」
その話の内容に、あいつは満足したような様子で
「ま、お前が『たまたま』、『偶然』そこに逃げたんならしょうがないな」
と笑っていった。
俺と彼女、あの娘は黙ったままだ。
「うん、『たまたま』ね。でも、奴らはそれを偶然とは思わなかったみたいでね」
あの人はため息をつく。
「その後、夜に学校に呼び出されたよ。奴らは、街を歩いていたら僕に挑発され、路地裏に誘い込まれたら不良がいた、と証言してるみたいだった」
・・・・・・どこまでも汚い連中だ。
「それで、僕が完全に悪者扱いさ。奴らは話しを合わせてきたみたいだったから、完全に6対1。どっちを先生が信じたかは・・・・・わかるよね?」
全員が静かにうなずいた。
「さらに、奴らは不良のお兄さん達が僕の仲間なんだ、って証言した」
あの人はかるく首を横に振る。
「勿論僕にそんな仲間はないないよ。もっとも僕に仲間がいるとしたら――」
あの人はにやりと笑ってから、言った。
「いるとしたら、馬鹿で祭り好きのニートだけだね」
あの人は一呼吸おくと言葉を続けた。
「問題はここからさ。僕たちはバンドコンテストで優勝したから、今度は文化祭のバンド発表会に出場できる。それが生徒会が定めたルールだった」
「そうだ。その通り」
「だけど、今回の事で職員は生徒会を操作して僕たちを出場禁止にするみたいだ」
沈黙。
その沈黙を破ったのはあいつの一言だった。
「おい、それどういうことだよ」
「そのままの意味だよ。僕たちは職員の考えでは文化祭のバンド発表会に参加できない」
あいつは怒りに手をふるわせた。
「そりゃないぜ!文化祭では金を稼げるんだぜ?入場料をとれるわけじゃないけど、お捻りはかなりの量が入ってくる。それをハピマテ代に使おうと思ってたのに、あいつらのふざけた言い訳でそんなことできるわけ・・・・・」
「まった。まず、落ち着いて欲しい。」
あいつの言葉を制すと、あの人は続けた。
「僕たちの参加をよくなく思ってるのは、職員だけさ。それに、僕たちが歌っているのは“アニメソング”なんだ。職員の中には一般人がよく考える『アニメ=オタク=犯罪者の卵』って事を思ってる人もいるかもしれない。」
あの人はにやりと笑うと、言った。
「そんな余計な先入観とガセ文句み負ける僕たちじゃないだろ?」
そして、眼鏡を直すと、最後の一言を放った。
「生徒会を、味方につけようと思う」


「生徒会を味方につけるって、そんなことできるの?さっき、職員に操作されてるって言って――」
「大丈夫」
俺の言葉を途中でさえぎってあの人が答えた。
そして、あの人は俺に
「黙ってたけど、生徒会長も“こっちの世界”の人間なんだ」
と耳打ちした。
――“こっちの世界”って・・・・・
そう思っていると、あの人が
「さぁ、ついた」
生徒会室の前につくと、ドアをこんこんとノックした。
「はい」
聞き慣れた女の人の声。たしか副会長の声だ。
「失礼します」
あの人がそう言って入る。俺達も後に続く。
部屋に入ると、窓際の日があたる場所で生徒会長が座って本を読んでいた。
会長は、読んでいた本を閉じると、俺達に目を向けた。
「何か用?」
会長が立ち上がって、人数分の椅子を用意してくれた。
そういえば聞いたことがある。朝と昼休み、放課後の空いている時間、会長と副会長は生徒会室にいなければならない、という話を。
「文化祭のバンドのことなんだけど――」
あの人が軽く事態を説明した。
「あぁ、その話なら先生から聞いたよ」
そう言って、会長は何かのプリントを取り出し、俺達に見せた。
そこには、あの人が言っていたような事が書き記されている。
「それで、どうしてほしいの?」
会長の言葉にあの人は笑って答えた。
「言わなくても分かるだろ?僕達側についてほしい」
「・・・・・」
会長は少しの間考えるような顔をした。
――やっぱり、駄目か
俺はそう思った。
いくらあの人でも、教員の力で操作されている生徒会を動かすことができるとは思えない。
しかし、会長の答えは俺の予想に反するものだった。
「よし、その話、乗った」
その答えを満足げに聞いたあの人は、一言だけ
「ありがとう」
と言った。
「え、ちょ――」
俺が発言しようとするが、それより前に会長が
「君たちが『どうにかしてくれ』って言ってこなかったら、どうしようかと思ったよ」
と言った。
「・・・・・え?」
不思議そうな顔をしている俺に会長は
「俺もVIPPERなんだ。ハピマテも毎月買ってたし、祭りが始まってからは複数枚買ったよ」
その時ほど、会長に親しみを覚えたことはなかっただろう。
生徒会長というのは、なんとなく遠い存在、というイメージが強かった。が、その時は自分と同じ、生徒なんだと思った。
「と、いうわけで生徒会は君たち『MATERILAS』を総力を決して支援しよう」
「なにを、やってくれるのかな?」
あの人が訊くと、会長は言う。
「まず、先生達に君たちの出場禁止を取り消すように、立ち会ってみるよ。望みは薄いけどね。もし、そこで拒否されたら――」
そこで言葉を切り、にやりと笑う会長。なんとなく、あの人に似ている。
「任せていたまえ」
その言葉に、満足げに頷くとあの人は
「と、いうことだ。生徒会が僕たちの味方についてくれた。」
と俺達に話しかけた。
俺もあいも、彼女もあの娘も、なんだか複雑な表情だった。
「そういうこと。後は俺達生徒会がなんとかするから、君たちは練習していてくれ。最高のハッピーマテリアル、期待してるよ」
そう会長が言ったところで、チャイムが鳴った。
俺達は急いで教室に戻った。


休み時間、あいつが俺達を集めた。
「俺が文化祭で歌う5曲を決めた。文化祭では、5曲の曲を選んで演奏することができる」
そう言って、紙を広げるあいつ。
「『いつだってLove&Dream』『ときめきココナッツ』『Maze of the dark』『おしえてほしいぞぉ、師匠』『ハッピー☆マテリアル6月度』以上。勿論全台詞込み。なにか反論があったら言ってくれ」
あいつが言う。誰も手を挙げない。
あいつは満足したように
「なら、これで決定だな。CD持ってない奴もいると思うから、持ってきた」
と言って、ズラリとCDを取り出す。俺とあの人は全て持っているから良かったが、あの娘と彼女はそれぞれ必要なものを受け取った。
と、そこで、変な気配に気がついた。
「・・・・・え?」
後ろを振り返る。そこに立っていたのは、国語の先生だった。



       (第七十四話から第七十八話まで掲載)